水の音、無形の雫

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わたし、ぜんぜんトイレに行きたくならないんです。   2012.05.17


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ゾンビになると「トイレに行きたくならない」らしいです。
逆に言えば、ゾンビになる前には少なくとも「トイレに行きたくなったことがある(トイレに行きたい感覚を知っている)」ということになります。「排泄する身体」の重要性については当ブログでも度々取り上げてきました。(もっとも、実際にトイレに行っていたのかはまだ分かりません。というのも、お父様の性格を鑑みるに、排泄物はすべて回収し保管していてもおかしくありませんし、現実的に考えてもそれは可愛らしい娘がいる父親として当然のおこないなので、「トイレではないどこか」で排泄していた可能性も十二分に考えられます。)
そんな礼弥ちゃんでありますが、どうやら今後は「紫陽花」の葉が主食になるようです。

sankarea3.jpg


紫陽花といえば、散華家の家紋としても使われるなど、様々な場面で象徴的に描かれています。
軽く調べてみると、紙が貴重だった時代にはトイレットペーパーの代わりに紫陽花の葉が使用されていたようです。紫陽花のことを「クソシバ」と呼ぶ地方もあるのだとか。※
そのことを知ったとき、すべての点が一本の線に繋がりました。(あたかもすべての便所が一本の下水管で繋がっているかのように!)
まずは、第三話のラスト、礼弥ちゃんが崖から落下し一度は死亡しつつも再び起き上がるというシーンを振り返ります。

sankarea4.jpg

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このとき、礼弥ちゃんの下腹部には黒塗り(ぼかし)処理がされています。BDで解禁されるのか否かは分かりませんが、テレビ的に不都合なナニかがあったのだと考えられます。そしてそのテレビ的に具合の悪いものとは、後にゾンビとして復活した礼弥ちゃんがその裁縫テクニックを駆使して縫い付けていた部位からも分かるとおり、「内臓」であると推測できます。
つまり、この場面では、落下事故の際に(高らかに雄々しく隆起する)樹木が突き刺さったことで下腹部に裂傷ができ、そこから内蔵がはみ出したのだと、まあ今さら指摘するまでもなく誰が見ても明らかだと思います。(往年のゾンビ映画なんかでも、内蔵(特に腸)がはみ出したゾンビはよく出てきますよね。)
では、その「内蔵がはみ出した」という事態はナニを意味するのでしょうか。答えは簡単です。礼弥ちゃんの人生における最後にして究極の「排泄行為」です。
通常であれば、ほとんどの生物は内臓の内容物を排泄器官を通して排出します。礼弥ちゃんの場合は、内蔵そのものをダイレクトに体外へと排出したわけです。つまりこの場面は、俗的な言い方をすれば「お漏らしシーン」だったわけですね。

さて、そんなダイレクトお漏らしを行った礼弥ちゃんですが、先ほど触れたように、あろうことかその内容物を再び体内へしまい込み、持ち前の裁縫技術で縫合するという驚くべき行動に出ます。
ここで、散華礼弥という人物の身体性に転回が訪れます。体外にはみ出した内蔵(すなわち、排泄物と同義である)を体内に取り込むという行為は、自身が排泄物を取り込む存在になったということ、つまり「便所的身体」を獲得したということになります。戦国乙女以来の快挙です。

この、「便所的身体」という視点から考えると、先ほど挙げた「紫陽花」にも意義が見えてくるでしょう。
紫陽花の葉とは実質的にはトイレットペーパーであるわけですから、便所的身体である礼弥ちゃんがむしゃむしゃ食べるのは何ら不自然なことではありません。(「便所」の定義はいろいろありますが、その一つに「トイレットペーパーを飲み込む」という性質が含まれているのは日常的な経験からも分かると思います。)
というか、紫陽花(トイレットペーパー)を食べるという描写によって、彼女の身体性が便所のそれへと変化したことを決定づけているわけです。

礼弥ちゃんは言いました。「わたし、ぜんぜんトイレに行きたくならないんです」と。
あたりまえです。あなた自身がトイレなのだから。

この作品は、ヒロインがゾンビになる話だとばかり思っていましたが、実際には「ヒロインが便所になる話」でした。そのことに気付くのに六話もかかってしまったのは便所論壇人として恥じ入るばかりです。よくよく考えたら「ゾンビ」という言葉は三文字変えるだけで「トイレ」になるんですよね。ちなみに「死者」という言葉はたった二文字変えるだけで「便所」になりますし、「よみがえり」は五文字変えると「おてあらい」になります。ちなみにですが。
そういえば、紫陽花を便所に吊るしておくと下半身の病気にならない、という言い伝えがありますね。特に女性に効果てきめんだとか。散華家の家紋に紫陽花が選ばれたのも、きっとそういったことに関連しているのでしょうし、実際礼弥ちゃんは病気に罹らない身体へと相成りました。深いですね。

まあそんなわけで、今期最も便所的な面白さに溢れた『さんかれあ』の話でした。
以上。


※参考:暮らしとアジサイ1





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